川の溶剤は浄水場で取れる? トリクロロエタンと1,4-ジオキサンの違い
2026-09-17 更新
1,1,1-トリクロロエタンは揮発しやすく、1,4-ジオキサンは水に残りやすい。環境や人体への影響と、曝気・活性炭・促進酸化の違いを解説します。
油汚れを落としたり、ほかの物質を溶かしたりするのに使う「溶剤」。同じ溶剤でも、川に入ってからの動きや、浄水場での取り除きやすさは違います。
川の届出で見かける2つの物質を比べると、活性炭やろ過を一括りに考えられない理由が分かります。
届出量はkg/年で、川や水道水で測った濃度ではありません。届出量の読み方 →
1,1,1-トリクロロエタン
川から空気へも移る
金属の脱脂洗浄などに使われてきた物質です。水面から空気へ移りやすい性質がありますが、水から減れば環境負荷もなくなるとは限りません。大気中で比較的長く残り、成層圏のオゾン層を破壊することが問題になりました。地下に浸透した場合は、水面からの揮発が起こりにくく、残り方も変わります。環境省・1,1,1-トリクロロエタン
人や生きものへの影響
高い濃度にさらされた人や動物では、中枢神経の働きを抑える作用が報告されています。動物の経口摂取試験では腎臓への影響なども調べられています。水生生物ではミジンコの繁殖への影響が評価に使われています。環境省・健康影響と生態影響
浄水場では?
水を空気と接触させて追い出す「曝気」と、粒状活性炭への吸着が処理方法として知られています。曝気は物質を分解する処理ではなく、水から空気へ移すものです。設備の設計では、取り除いた後の排気も考える必要があります。米国EPA・1,1,1-トリクロロエタンの処理技術
1,4-ジオキサン
水に溶けて残りやすい
水によく混ざり、土に吸着しにくく、通常の微生物分解も受けにくい物質です。土壌から地下水へ移動することもあります。名前は似ていますが、ダイオキシン類とは別の物質です。環境省・1,4-ジオキサン
人や生きものへの影響
長期間飲み水に混ぜて与えた動物実験では、肝臓や腎臓への影響、腫瘍の発生が報告されています。人への発がん性については、動物の知見と同じ確かさで結論づけられているわけではありません。WHO・1,4-ジオキサン
水生生物の評価では、藻の成長などが調べられています。魚に急性の影響が出るかだけでなく、水に残って取水地点や地下水まで移動しやすいことも、水源を守るうえで問題になります。環境省・環境中での動きと生態評価
浄水場では?
通常の凝集・ろ過では取りにくく、活性炭の効果も限られます。紫外線やオゾンと過酸化水素などを組み合わせ、分解力の強い反応を起こす「促進酸化」が処理方法の候補です。こうした設備がすべての浄水場にあるわけではありません。WHO・1,4-ジオキサン、WHO・処理性能(付表A5.2)
「活性炭があるから大丈夫」とは言い切れない
この2つだけでも、得意な処理は異なります。活性炭は使い続けると吸着できる余力が減り、原水の成分や接触時間も性能に関わります。処理方式の名前だけで判断せず、処理後に目的の濃度まで下がっているかを確認することが大切です。
日本では、1,4-ジオキサンは水道水質基準の 0.05 mg/L以下、1,1,1-トリクロロエタンは水質管理目標設定項目の 0.3 mg/L以下です(2026年9月確認)。基準と管理目標を区別して、検査結果の同じ物質名を見てください。環境省・水質基準と管理目標
ほかの読みもの
この記事は公開データと公的な資料をもとに書いています。健康や飲用の判断は、お住まいの水道事業者の最新の公表値をご確認ください。