鉛・カドミウム・ヒ素・水銀。川の金属類は、どんな影響がある?
2026-09-17 更新
川のPRTR届出に出てくる金属類の影響を物質別に解説。人体への影響、泥や生物への蓄積、三価・六価クロムの違い、浄水処理と配管の問題をまとめました。
鉛、カドミウム、水銀などは、名前を知っていても、川の届出で見かけると気になる物質です。ただ、同じ元素でも化学的な形によって、水への溶けやすさや体への入り方が変わります。
ここではヒ素も含めて紹介します。ヒ素は厳密には半金属で、「重金属」という一括りだけでは性質を十分に説明できません。
ここで説明するのは物質の性質です。個々の川の汚染や健康影響を判定したものではありません。届出量と濃度の違い →
鉛及びその化合物
人への影響: 体に取り込まれた鉛は骨などに蓄積します。子どもでは神経系の発達への影響が特に重視され、成人では腎臓などへの影響も調べられています。飲み水以外に、食品や土・ほこりなどから入る分もあります。
川での影響: 粒子や泥に付きやすく、水が澄んでいても泥に残っている可能性があります。藻の成長を妨げる作用など、水生生物への影響も評価されています。環境省・鉛及びその化合物
カドミウム及びその化合物
人への影響: 長期間取り込むことで、腎臓の働きへの影響が問題になります。日本で起きたイタイイタイ病の原因物質としても知られますが、届出に名前があることだけで同じような被害が起こるとは言えません。
川での影響: 泥や土に吸着し、一部は水に溶けます。土の条件によって植物への取り込まれやすさも変わるため、水だけでなく農地や食品への経路も関係します。汚染された水域では魚や底生動物への影響も問題になります。環境省・カドミウム及びその化合物
ヒ素及びその無機化合物
人への影響: 無機ヒ素を長期間含む飲み水を摂取した人の調査では、皮膚の変化や、一部のがんとの関連が報告されています。魚介類に含まれる有機ヒ素などを、同じ毒性として扱うことはできません。
川での影響: 鉱山・工業などの影響のほか、地層から自然に溶け出すものもあります。検出されたことだけから排出源は特定できません。水や泥の中でどのような形になっているかが、移動や処理のしやすさにも関係します。環境省・砒素及びその無機化合物
水銀及びその化合物
人への影響: 水銀は形によって毒性が違います。無機水銀では腎臓への影響、メチル水銀では神経系、とくに胎児の発達への影響が重視されます。
川での影響: 水中や泥の中で微生物の働きにより有機水銀に変わるものがあり、食物連鎖を通じて魚などに蓄積します。届出の「水銀及びその化合物」の量を、すべてメチル水銀の量と読み替えてはいけません。魚を食べることによる影響を調べるには、魚体中の測定結果も必要です。環境省・水銀及びその化合物
クロム及び三価クロム化合物/六価クロム化合物
この2つはPRTRでも別の届出項目です。三価クロムの数値を六価クロムの数値として扱うことはできません。
六価クロムを含む水を与えた動物実験では、消化管への影響などが報告されています。吸入による発がん性の知見もありますが、吸入と飲み水の評価は区別する必要があります。三価クロムは消化管から吸収されにくい一方、化合物や取り込み方によっては影響があり、「三価なら無条件に無害」という意味でもありません。
環境中では、六価から三価に変わると水に溶けにくくなる場合があります。水や泥の状態によって形が変わる点も、流れた量だけでは捉えにくいところです。環境省・三価クロム、六価クロム
ニッケル化合物
ニッケルでは、化合物を含む飲み水を与えた動物実験で、体重増加の抑制や生殖・発生への影響が調べられています。職場で粉じんなどを吸う場合の発がん性の知見を、そのまま川の届出量に結びつけることはできません。
すでにニッケルにアレルギーのある人では、口から取り込むことでも皮膚炎が起こる場合があります。一般の人が飲むことで同じ反応を起こす、という意味ではありません。WHO・ニッケルの健康影響
水に溶けたものや粒子に付いたものがあり、水生生物への影響も評価されています。同じ「ニッケル」でも、金属そのものと個々の化合物では性質が違います。環境省・ニッケル化合物
浄水場では、形に合わせて取り除く
金属の元素そのものは、塩素消毒で消えるわけではありません。粒子に付いているものを沈殿・ろ過で分けたり、溶けているものを吸着材やイオン交換などで回収したりします。原水のpHや共存する成分によって効果は変わります。
たとえばヒ素は、酸化して処理しやすい形に変えたうえで凝集・吸着などを行う方法があります。カドミウムや無機水銀にも除去できる処理はありますが、「金属をまとめて全部取り除く設備」がどの浄水場にもあるわけではありません。WHO・浄水処理の方法と性能(付表A5.1・A5.2)
鉛は、浄水場を出た後に古い給水管などから溶け出す場合もあります。その場合は浄水場の処理に加えて、配管側の対策が必要です。原水だけでなく蛇口の検査結果を見る理由の一つです。WHO・配管の腐食と鉛
検査結果の名前を合わせる
日本の水道水の検査では、「鉛及びその化合物」「六価クロム化合物」など、決められた項目で測定します。一方、ニッケルは水質基準項目とは別の「水質管理目標設定項目」です。最新の値と対象項目は環境省の一覧で確認できます。
ほかの読みもの
この記事は公開データと公的な資料をもとに書いています。健康や飲用の判断は、お住まいの水道事業者の最新の公表値をご確認ください。